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第1回 One Health Relay Report(野生動物学教室 坪田 敏男 教授)
One Health Relay Reportでは、教員の研究紹介を行います。
第1回目は坪田先生の「象の結核」に関するお話です。
坪田 敏男 教授
獣医学研究院
環境獣医科学分野 野生動物学教室
【研究テーマ】
・クマ類における繁殖と栄養状態との関係に関する研究
・アジアにおけるクマ類の管理と保全に関する研究
・野生動物における生態と感染症の関係に関する研究
【自己紹介】
クマと関わりを持ち出して35年になりますが、まだまだ彼らの生理・生態はわからないことだらけです。もうしばらくはクマの研究に没頭したいと思います。クマをはじめ野生動物のはたす役割や興味深い生態などを広く伝えていければと思っています。
【研究紹介】
ゾウにみられる結核症は、Mycobacterium tuberculosisによって引き起こされる人型結核症であることが知られており、これまでにアジアゾウ、アフリカゾウともに野生下と飼育下で発生がみられています。私どもは、10年ほど前からネパールにおいて観光や使役のために飼育されているアジアゾウでの結核症を調べ始めました。近年ネパールでは、結核症により死亡するアジアゾウもおり、彼らの生存を脅かす要因の一つとなっています。これまでの研究により、1)アジアゾウから分離培養した結核菌がネパール人で見つかっている結核菌の遺伝子型と同一であった、2)ネパール人から見つかった遺伝子型の結核菌に重複感染していた、3)結核に罹患したアジアゾウの血中甲状腺ホルモン動態を明らかにした、4)アジアゾウの新たな結核診断法としてインターフェロンγ※を用いたサンドウィッチELISA※※法を確立した、などの研究成果を挙げてきました。これらの研究成果は、ネパールの希少野生動物の一種であるアジアゾウの保全に役立つだけでなく、世界的にみて貴重な生態系の重要な構成要素である生物多様性の保全に対しても貢献するものです。なお本研究は、人獣共通感染症リサーチセンターの鈴木定彦教授グループとの共同研究として行われています。
※ インターフェロンγは免疫に関わる生体物資で、その産生量が結核感染動物の免疫反応の程度を表します。
※※ ELISAは、Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assayの略で、抗原抗体反応を利用して微量生体物質を定量する方法です。
ネパールのアジアゾウで見つかった結核病巣
坪田先生による アジアゾウからの採血