おわりに
講座のおわり、来場者に向けて「答えが出ずにもやもやして帰る人も多いと思う。それが現状」と話しました。卵は、ほかの畜産物に先駆けて、動物福祉に関する議論や社会実装が進んでいる領域です。生卵だけでなく、マヨネーズなどの加工品でも選択肢が増えてきました。今回、さまざまな角度から“卵”をみることで、自分が何を大事にしたいのか、じっくり考えること、そして購買というかたちでそれを表現することの意義を強く感じました。動物の自由を願うか、農家さんを応援したいか、環境へ配慮したいか、思いも価値観も、個人、文化、国によってさまざまです。「買いものは投票だ」とも言われるように、私たちの購買によって変えることのできる社会である、と信じます。ただ、大事にしたいことは柔軟であって良く、好みやライフステージなど、さまざまな状況によってゆるやかに変化するのが自然なのだと思っています。そんな思いも込めて、「これも一種の推し活だ!」をこの市民公開講座のテイクホームメッセージとしました。
一方、今回の講座でたびたび言及されたのは、「ニワトリがどのように飼養されているか、その生産や流通、そして農家さんの努力が社会にうまく伝わっていない」ということ。これは、“受け手”の問題でもありますが、大いに“伝え手”の問題であることを改めて突き付けられた気がしました。動物に対する考え方・哲学は多様で、ときに感情的な議論も起こります。それでも今回の講座では、「対話によって、バランスが取れるところを決めていく」ことが、いまの“進むべき道”として導き出されました。対話に必要なのは「知ること」。そのために「伝えること」。私たちの知識や経験、そして思いが、動物の未来を変える一歩となるよう願い、記録としてここに残します。