第42回 One Health Relay Report(ワクチン研究開発拠点 澤 洋文 教授)


第42回目は澤先生による「ワクチンの開発研究について」のお話です。

  

 澤 洋文 教授

 創成研究機構ワクチン研究開発拠点

 生体応答解析部門

 

  【研究テーマ】

 ・日本発ワクチンの開発研究

 

 

 

 

 「日本発ワクチンの開発研究」

 

 北海道大学 ワクチン研究開発拠点(Institute for Vaccine Research and Development: IVReD)は、日本医療研究開発機構(AMED)による「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」のシナジー拠点として採択されたことに伴い、2022年10月に設置されました。

 これまでの成果としては、IVReDに属する獣医学研究院の迫田義博教授らの研究グループが2022 年本邦で初めて、北海道で確認された死亡キタキツネから臓器を回収し、高病原性鳥インフルエンザウイルス株(H5N1亜型)を単離しました (Virology 2023)。本株(Ezo Red Fox株)は、日本のWHO Collaborating Centre for Reference and Research on Influenzaの代表であり、IVReDの客員教授である長谷川秀樹博士がセンター長を務める、国立感染症研究所 インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センターに送付され、ゲノム、病原性、抗原性が解析されました。その結果、本株がH5N1亜型のパンデミックワクチン候補株として有用である事が示唆された為、本ウイルスを基にして、ワクチン株(NIID-002株)を作製しました。NIID-002株は親株と同様の抗原性を保持しつつ、その病原性がワクチン株として安全に使用できる事、生産性も確保できる事が明らかになりました。長谷川センター長がWHOのVaccine composition meeting(ワクチン選定会議)で本結果について説明し、NIID-002株は、2024年2月に日本発のWHOの推奨するH5N1のワクチン候補株 (Candidate Vaccine Viruses: CVV)のひとつになりました。また、2024年5月には、厚生労働省の厚生科学審議会感染症部会でプレパンデミックワクチン株として備蓄する事が決定して、現在製造が進んでいます。

 

 

     

北海道で確認された死亡キタキツネ         北海道大学で保管されているインフルエンザライブラリー

 

    

2024年2月に日本発のWHOの推奨するH5N1のワクチン候補株となった

 

 

細胞培養実験をする澤 洋文拠点長