第41回 One Health Relay Report(酪農学園大学 萩原 克郎 教授)


第41回目は萩原先生による「E型肝炎ウイルスについて」のお話です。

  

 萩原 克郎 教授

 酪農学園大学

 獣医学類 獣医ウイルス学

 

  【研究テーマ】

 ・持続感染ウイルスと宿主の関係

 ・E型肝炎ウイルス(HEV)の疫学調査

 

 

 

 E型肝炎ウイルスの社会的問題」

 

 人獣共通感染症原因ウイルスであるE型肝炎ウイルス(HEV)遺伝子型3と4は、動物では臨床症状を示さず、体内で一過性にウイルスを増殖させ糞便中に排泄し環境を汚染します。また、豚の感染例では、出荷月齢の肝臓中にHEVが確認されることもあります。現在までに、世界中で様々な家畜や野生動物からHEVが検出されています。今後も新たなタイプが確認される可能性があります。

 HEVのヒトへの感染は、主に経口感染で、感染事例が毎年報告されています。北海道は、報告症例数が多い地域です。多くの事例は、ブタ、イノシシおよびシカ肉の喫食に起因します。家畜間の飼料を介する感染伝播、環境汚染による伝播などその広がりは多様です。社会的な問題として、動物由来のHEVがヒトの肝炎を誘発する事例があります。更に、ヒトの不顕性感染例で、ウイルス血症時の感染者由来の献血を介して輸血患者にHEVを感染させてしまう、輸血後肝炎事例が報告されています。症例数は少ないですが、臓器移植においても移植後肝炎が確認されています。

 このように、動物では不顕性感染症がヒトへの感染源となり、不顕性患者由来の血液が医原性疾患につながる事例がこの感染症の特徴です。上記の事実を考慮したHEV感染予防対策には、環境〜動物〜人の健康を意識したOne Health conceptが重要です。

 

 

HEV陽性豚は、臨床症状を示さず出荷月齢まで増体することがあります。

 

加熱不十分な汚染肉等を喫食すると、肝炎症状を呈する例と不顕性となる事例があります。

不顕性の感染者が、ウイルス血症中に献血をすると血液を介してHEVが伝播することがあります。