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第33回 One Health Relay Report(獣医衛生学教室 佐藤 豊孝 准教授)
第33回目は佐藤先生による「薬剤耐性菌について」のお話です。
佐藤 豊孝 准教授
獣医学研究院
衛生学分野 獣医衛生学教室
【研究テーマ】
・One Healthに基づいた薬剤耐性菌の分子疫学的解析および耐性機構の解析
・多剤耐性菌感染症の克服に向けた新規治療薬の開発
「耐性菌のいない世界を目指して」
薬剤耐性菌は、治療に使用する抗菌薬が効かなくなってしまうため、私たちの健康上の大きなリスクになります。中には複数の抗菌薬が効かない「多剤耐性菌」も出現しています。薬剤耐性菌は世界中の人・動物・環境に広がっており、2050年までに何も対策を取らなければ世界で年間1,000万人が薬剤耐性菌により命を落とすと試算されています。そのため、WHO*1を中心に各国主導の耐性菌(AMR)対策が進められています。しかし、一部の耐性菌は増加に歯止めが効かない状態です。
私たちは、「なぜ歯止めが効かない耐性菌がいるのか?」、「このような耐性菌をどうしたら減らすことができるのか?」このような視点で、最新の細菌学的アプローチを用いた検証と研究を進めています。これまでに、人や動物の病院内だけではなく、市中や家庭内において健康な人やペット(犬や猫)にも広く耐性菌が拡散・定着し、一部は両間で伝播している解析結果が得られています。ですので、院内だけではなくOne Healthに基づく社会全体でのAMR対策がより重要になってきます。また、私たちは感染部位などの特定の条件でのみ抗菌活性を示す物質を見つけており、新規治療薬の開発に向けた創薬研究も行なっています。
このようなアプローチのもと、「耐性菌がいなくなった世界」を目指して、まずは少しでも耐性菌で人や動物が苦しまない社会の創出に貢献しようと取り組んでいます。
*1 WHO:世界保健機関(World Health Organization)
薬剤添加培地に発育する細菌(耐性菌)
市中内での耐性菌の広がりを解析 多剤耐性菌にも有効な新たな治療薬の開発