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第30回 One Health Relay Report(歯学研究院 網塚 憲生 教授)
第30回目は網塚先生による「骨について」のお話です。
網塚 憲生 教授
歯学研究院
口腔健康科学分野 硬組織発生生物学教室
【研究テーマ】
・骨・軟骨の細胞生物学・微細構造学的解析
・骨粗鬆症・骨軟化症などの代謝性疾患の解明
・骨・腎臓・血管などによる臓器連関
「骨における不思議を解き明かす」
私たちの骨は、リン酸カルシウムが蓄積した硬い組織(石灰化組織)で出来ており、ヒトの体を支え、また、筋肉と協働して運動を可能にしています。一方で、骨は、細胞によって常に代謝を受けており、古い骨から新しい骨へと置換わっています。この骨代謝バランスが崩れると、骨粗鬆症になり骨折しやすい骨になってしまいます。また、骨は体を支え運動する器官だけでなく、骨の中に存在する細胞がネットワークを作り、カルシウム・リンなどのミネラル輸送やホルモンを分泌することで、腎臓をはじめとする他の臓器との連携を行っています。また逆に、糖尿病や慢性腎臓病になるとその影響が骨にも現れてしまいます。
私たちの研究室では、このような骨を中心として軟骨・歯などといった石灰化組織における基礎研究をおこなっています。具体的には、石灰化メカニズムの解明、骨粗鬆症治療における細胞学的メカニズム、先天性骨格異常と遺伝子変異、血中リン・カルシウム調節機構、血管石灰化などの異所性石灰化、骨代謝における他臓器との機能連携など多岐にわたります。
これら研究テーマについて、各種遺伝子改変マウスやモデル疾患動物を用いて、透過型電子顕微鏡(免疫電顕を含む)、micro-CT、EPMA/EDX*1による元素マッピングなどといった各種の観察機器を用いて、生体における骨代謝異常・石灰化異常などを中心とした検索を進めています。
*1 EPMA(electro probe micro-analyzer)およびEDX(Energy Dispersive X-ray spectroscopy)は、ともに、電子線を試料に照射したときに発生する元素特有の特性X線を検出・分析することで、そこに存在する元素の種類や量を計測する機器。
ラボでの実験風景
歯学研究院では、日中は歯科診療の大学院生が多いため、夕方以降に研究をする場合が多いです。
透過型電子顕微鏡
当教室にはH-7800(右)とH-7100(左)の2台の透過型電子顕微鏡がありますが、微細構造観察の時に重宝しています。
本年3月(令和3年度)に博士(歯学)の学位を修得した3名のお祝いを簡単に行いました。