第19回 One Health Relay Report(公衆衛生学教室 苅和 宏明 教授)


第19回目は苅和先生による「ウイルス性人獣共通感染症について」のお話です。

  

 苅和 宏明 教授

 獣医学研究院

 衛生学分野 公衆衛生学教室

 

  【研究テーマ】

  ・ウイルス性人獣共通感染症

 

 

 

 

 「ウイルス性人獣共通感染症の制圧を目指して」

 

 近年、世界の様々な国や地域で人獣共通感染症が多発しています。現在、世界中に急速に感染が拡大し大きな社会問題となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も、もともとはコウモリが保有していたウイルス(SARS-CoV-2)が、何らかの経路で人に感染したことが現在の世界的な大流行の始まりと考えられています。私たちの研究室では、ハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、ウエストナイル熱、重症熱性血小板減少症、およびCOVID-19などのウイルス性人獣共通感染症を研究テーマとしています。特に宿主*におけるウイルスの存続様式を解明することで、人獣共通感染症の発生予防に役立てたいと考えています。

 以下、ハンタウイルス感染症に関する研究テーマについて説明します。ハンタウイルス感染症はハンタウイルスを病原とする人の感染症で,腎障害や出血傾向などを主徴とする腎症候性出血熱(HFRS)と、呼吸困難などの呼吸器障害が特徴的なハンタウイルス肺症候群(HPS)の2つの病型が知られています。世界中の多くの動物種から多様なハンタウイルスが見つかっていますが、げっ歯類が保有するハンタウイルスが人に病原性を示すことが明らかになっています。現在、国内外のげっ歯類由来のウイルスを用いてハンタウイルスの増殖様式や宿主特異性などに関する研究を進めています。

 

*宿主:自然界で病原体が持続的に感染し続けている動物種のことをいう。

 

            

ハンタウイルス感染症の伝播経路                      野外におけるげっ歯類の捕獲作業

人はげっ歯類からのウイルスを含んだ排泄物を吸引することによって感染し、

ハンタウイルス肺症候群 (HPS)や腎症候性出血熱(HFRS)を発症する。

 

エゾヤチネズミからの培養細胞株の樹立と新規ハンタウイルスの分離

エゾヤチネズミ由来細胞にエゾヤチネズミの臓器乳剤を接種することにより

新規ハンタウイルスが分離できた。他の培養細胞ではウイルスは分離できなかった。