第15回 One Health Relay Report(国際疫学部門 五十嵐 学 准教授)


第15回目は五十嵐先生による「出血熱ウイルスについて」のお話です。

 

 五十嵐 学 准教授

 人獣共通感染症国際共同研究所

 国際疫学部門

 

 【研究テーマ】

 ・出血熱ウイルスの蛋白質機能探索

 ・蛋白質の立体構造に基づく医薬分子の設計

 

 

「コンピュータで出血熱ウイルスの弱点を探る」

 

 アレナウイルス、ブニヤウイルス、フィロウイルスおよびフラビウイルスの中には、ヒトに感染すると重篤な出血熱を引き起こすものがあります。このような出血熱ウイルスに対して承認された治療薬は殆どありません。既存の抗ウイルス薬が有効な場合もありますが、治療効果の証拠が不十分な上に、強い副作用が懸念されます。より効果的で毒性の低い治療薬の開発が望まれています。

 しかし、治療薬の探索は十分に行われているとは言えません。出血熱ウイルスはほぼ全て、危険度の高い病原体として位置づけられ、感染性ウイルスを用いた実験はBSL3*またはBSL4*施設を備えた限られた研究機関でしか行えないためです。私たちの研究グループでは、コンピュータ解析と感染性ウイルスを用いない実験を組み合わせた方法を考案し、出血熱ウイルスに対する薬のシーズを探しています。

 一般にウイルスの増殖過程において、ウイルス蛋白質は他のウイルス蛋白質や宿主分子と相互作用し、機能を発揮します。したがって、ウイルス蛋白質上の相互作用/機能部位を同定し、化合物で阻害すると、ウイルスの増殖を止められる可能性があります。つまり、ウイルスの弱点を探して、急所を突くのです。私たちは出血熱ウイルスが持つ蛋白質の構造情報を解析し、ウイルス蛋白質上の相互作用/機能部位を推定する手法を開発してきました。またコンピュータを駆使して、そのような部位を標的とした医薬候補化合物を探索しています。

 

*BSLはbiosafty levelの略で、微生物・病原体等を取り扱う実験室・施設の基準です。最も緩やかなレベル1から最も厳しいレベル4となっています。

 

 

               

GPUを搭載したコンピュータシステム   エボラウイルスに対する653,312化合物のバーチャルスクリーニング