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第11回 One Health Relay Report(感染・免疫部門 東 秀明 教授)
第11回目は東先生による「炭疽について」のお話です。
東 秀明 教授
人獣共通感染症国際共同研究所
感染・免疫部門
【研究テーマ】
・病原性バシラス属細菌の病態発現機構
「炭疽について」
炭疽は炭疽菌の感染によって引き起こされる病気です。ヒトでは、炭疽菌は皮膚、肺、消化管などに感染します。感染した部位は、炭疽菌から産生される毒によって細胞が壊死し、組織傷害が引き起こされます。肺や消化管で発症した炭疽を放置すると、致死率は90%を超える非常に怖い病気です。日本国内では2000年にウシで発症が確認されたのを最後に炭疽事例は報告されていませんが、アフリカ、東南アジアの国々では、現在でも多くの動物や人が炭疽を発症し大きな問題となっています。私達は2011年よりザンビア大学獣医学部と協力し、ザンビア国内の家畜、野生動物及び土壌等を対象とした炭疽調査を行っています。奇しく調査を開始した2011年に、ザンビア北東部の一集落で死者7名を含む400人以上の人が炭疽を発症し、その周辺ではカバをはじめとした数百頭に及ぶ野生動物の斃死体が確認されるという惨事が起きました。私達は、炭疽分子診断法をザンビアへ導入し、炭疽集団感染の原因解明を進めたところ、炭疽で斃死したカバ肉を住人が食用として集落へ持ち帰り、感染を拡大させたことが集団感染の原因であることを明らかにしました。その後の私達の調査により、カバやゾウなど多くの野生動物が炭疽で斃死している状況が明らかとなっています。野生動物はザンビアで貴重な観光資源であり、今後もザンビア政府機関とともに調査を実施し、同国の炭疽対策に協力していきたいと考えています。
炭疽で斃死したゾウ 2016年炭疽調査チーム