第36回 One Health Relay Report(帯広畜産大学 横山 直明 教授)


第36回目は横山先生による「フィールドでの活動について」のお話です。

  

 横山 直明 教授

 帯広畜産大学 原虫病研究センター

 高度診断学分野

 WOAHリファレンスラボラトリー

 

  【研究テーマ】

 ・牛及び馬ピロプラズマ症に関する診断法の開発と疫学調査

 

 

 

 フィールドに出よう!」

 

 2023年9月にウガンダのチボガという酪農が盛んな町に行ってきました。JICA草の根プロジェクトによる派遣で、滞在の目的は現地の臨床獣医師や農家に対する技術支援と教育です。アフリカの中央に位置するウガンダは標高が高く蚊はあまり見られませんでしたが、ツェツェバエの襲来をところどころで受けました。私の見たウガンダの畜産業は効率が悪く、隣国ケニアと比較しても、その経済は大変厳しいものでした。牛ピロプラズマ症の診断にはPCR*1法やELISA*2が有効で、治療薬としてジミナゼンなどが、またその地域に合わせたマダニ対策も効果的であると説明しても、それらを進める資金がないとウガンダの獣医師は訴えます。特に、耐性マダニの出現や治療薬が手に入らない牛ピロプラズマやアナプラズマの蔓延が大きな問題となっています。チボガにある地方獣医事務所には顕微鏡、インキュベーター、冷凍庫、バッテリーは設備されていましたが、PCRやELISAの関連機器は手当されていません。滞在中私たちはその顕微鏡を使って、どのようなマダニがいるのかを鑑別できるように、また血液標本からピロプラズマやアナプラズマが判定できるように、その技術やノウハウを伝えてきました。しかし課題は多く、問題は全く解決できていません。最先端の研究に従事する皆さんならどうしますか? 研究室で得られた研究成果をフィールドまでどのように繋げるか、またその国際貢献を果たすために今どのような研究をすれば良いか、とても難問ですが重要です。フィールドに出て、問題を抽出し、その出口を見据えた研究を進めたいと心がけています。

 

*1 ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)、遺伝子診断法の一つ

*2 酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)、血清診断法の一つ

 

 

ウガンダの牛の搾乳の様子           ウガンダで採取したマダニ

 

顕微鏡による観察実習の様子(中央:白藤 梨可先生)