第34回 One Health Relay Report(バイオリソース部門 中島 千絵 教授)


第34回目は中島先生による「多剤耐性結核について」のお話です。

  

 中島 千絵 教授

 人獣共通感染症国際共同研究所

 バイオリソース部門

 

  【研究テーマ】

 ・病原微生物の迅速、簡便、安価な検出法および型別法の開発

 ・人獣共通感染症起因菌、薬剤耐性菌の疫学調査

 

 

 「多剤耐性結核」

 

結核は、現在でも年間で約1千万人の新患を出し、毎年150万人超の方々が亡くなっている感染症です。かつては日本でも若い方を含め多くの犠牲者を出しましたが、良い治療薬が開発されたことにより、先進国ではほぼ顧みられなくなりました。ところが、途上国ではWHOが旗を振って対策に注力しているにもかかわらず、はかばかしい進展が見られていません。その理由は、患者の発見の遅れと不適切な治療によるものです。結核の治療には数ヶ月間もの長期を要しますが、経済的な理由等により治療を中断してしまいますと、薬剤耐性菌を作る原因となってしまいます。治癒していない状態での社会復帰は次の感染者を生み、感染の連鎖はときに高い感染力を持った多剤耐性菌株の発生を招く結果となります。結核や多剤耐性結核の蔓延を防ぐには、早期に診断し、正しい治療を行うしかありません。我々は、電力供給や水道設備等が整っていない地域でも、また、専門技術を持った検査員が居なくても、簡便、迅速、安価に診断実施できる方法があれば、多くの人々が適切な治療を受けることができ、多剤耐性菌の蔓延を生む悪い連鎖を断ち切ることができると考えました。「病原体に得意的な遺伝子を等温で増幅し、それを目視で判定する」をコンセプトに、結核菌を始めとした様々な病原体の検出法、薬剤耐性判定法、型別法*1を開発しています。

 

*1(ここでは)病原体をその遺伝学的特徴によって、類似のものごとにグループ(型)分けし、識別する方法

 

「アフリカの感染症と闘う 100円検査キット開発」

https://www.youtube.com/watch?v=QY0fDBaSmVs&t=3s

「人獣共通感染症との戦い#5 使命は発展途上国から結核と睡眠病をなくすこと」

https://www.hokudai.ac.jp/researchtimes/2022/04/post-55.html

 

当研究室では、アジア、アフリカ諸国から多数の留学生を受け入れています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 研究室で開発されたPCRチューブサイズの

 結核菌型別キット “スポリゴアレイ”