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第32回 One Health Relay Report(帯広畜産大学 菅沼 啓輔 准教授)
第32回目は菅沼先生による「アブについて」のお話です。
菅沼 啓輔 准教授
帯広畜産大学 グローバルアグロメディシン研究センター
原虫病研究センター
【研究テーマ】
・アブやサシバエなどの制御法に関する研究
・トリパノソーマ症治療・予防薬の開発に関する研究
「牧場の厄介者:アブ」
「吸血する昆虫・節足動物」と聞いて多くの人が思い浮かべるものは、マラリア原虫やデング熱ウイルスなど多種多様な病原体を媒介する「蚊」や、野原を駆け回った犬や人の体に知らないうちに喰いついていてびっくりする「マダニ」でしょうか?一方、夏季に牧場で大発生し問題となる「アブ」は、多くの人が名前を聞いたことがあっても実物をまじまじと見る機会は多くないと思います。
他の吸血昆虫に比べて体が大きいアブは一回の吸血で0.1 - 0.5 mLと大量に吸血し、また多数のアブが一度に襲いかかるので、吸血された動物が貧血になることもあります。アブの吸血はとても痛いので、アブが近寄っただけで動物が暴れ出し人に危害を加えてしまう危険性もあります。さらにアブは多種多様な病原体を機械的に伝播します。アブが媒介し熱帯・亜熱帯地域で猛威を奮っている動物感染症の一つに、トリパノソーマ症があります。
重要な家畜衛生害虫であるアブですが、他の吸血昆虫にくらべて研究が進んでおらず、有効な制御法が確立されていません。そのため、私たちは「顧みられない吸血昆虫(?)」であるアブによる吸血被害とアブによって媒介されるトリパノソーマ症を中心とした感染症を制御するための研究を行なっています。