第26回 One Health Relay Report(帯広畜産大学 西川 義文 教授)


第26回目は西川先生による「病原性原虫の制圧について」のお話です。

  

 西川 義文 教授

 帯広畜産大学 原虫病研究センター

 生体防御学分野

 

  【研究テーマ】

  ・原虫病発症メカニズムの解明

  ・原虫病をコントロールするワクチン開発と創薬

  ・社会実装可能な感染症診断システムの開発

 

 「病原性原虫の制圧」

  

 病原性原虫の制圧には、基礎研究と応用研究の融合が必要です。つまり、原虫が感染して病気が発症するメカニズムを理解することで現実的な治療・予防戦略を開発し、現場での有効性を評価することのできる体系的な研究アプローチが重要となります。

 病原性原虫は、宿主の代謝機構を巧みに利用して寄生します。例えば、トキソプラズマは様々な動物細胞に侵入し、宿主の免疫機構からの逃避と宿主細胞から栄養物質の強奪を行います。また個体レベルでは、感染により様々な病態が発現します。例えば、マラリアは重度の貧血、トキソプラズマ症とネオスポラ症は流産や神経症状、クリプトスポリジウム症は下痢が代表的な疾患です。これら病気の発症メカニズムを解明するために、マウスや自然宿主動物を対象にした病態解析による病原性因子の同定を進めています。

 原虫病の発症メカニズムに着目することで病気のコントロールが可能となります。ナノ粒子とワクチン抗原を組み合わせることで、感染細胞を攻撃できる免疫細胞の誘導が可能な次世代型ワクチンの開発を進めています。また、抗原虫病薬の開発を目指し、世界各地の天然生物資源や化合物ライブラリーを使って薬剤スクリーニングを行なっています。

 研究者の大きな使命の一つに研究成果の社会還元があります。フィールドでの診断・疫学調査に適応可能な診断システムの開発を進めて、日本や途上国の感染状況の調査と、対策提言を行っています。

 

 

トキソプラズマの電子顕微鏡写真   OIE/FAO Neglected Zoonosesでのセミナーの様子

 

フィリピン大学セブ校での実習説明の様子