第17回 One Health Relay Report(薬理学教室 乙黒 兼一 教授)


第17回目は乙黒先生による「アストロサイトについて」のお話です。

 

  乙黒 兼一 教授 

   獣医学研究院

   基礎獣医科学分野 薬理学教室

 

  【研究テーマ】

 ・内因性伝達物質としてのアデノシン・硫化水素の役割

 ・伝達物質によるアストロサイト機能の調節

 

 

「アストロサイト」

 

 脳や脊髄は1000億個とも2000億個ともいわれる膨大な数の神経細胞で構成されていますが、実は神経細胞以外の細胞がその10倍以上も存在しています。それらはまとめてグリア細胞と呼ばれていますが、そのなかでも最も多いのがアストロサイトです。アストロサイトは、神経細胞の間を埋め組織の構築を維持することや、神経細胞の周りのイオン環境を整えるなど、裏方役の細胞と考えられてきました。ところが最近、アストロサイトが中枢神経機能の調節の中心的な役割を担い、神経活動や脳血流をコントロールすることで動物の行動に影響を与えていることがわかってきました。また、アストロサイトの機能変化がうつ病やてんかんなど様々な病気の引き金となっていることも指摘されています。一躍、表舞台に躍り出たアストロサイトですが、まだまだ未知な部分が多い細胞です。私たちの研究室では、「この細胞(アストロサイト)は、何をしているのだろう?」「こんな刺激をしたら、どんな反応をするのだろうか?」など素朴な疑問から始まった研究をしています。アストロサイトの研究を通して、脳や脊髄の新しい側面を明らかにすることを目指して研究を続けています。

 

   

培養した脊髄アストロサイトの染色像        マウスの軌跡(右上)やヒートマップ(右下)による行動解析

刺激でアストロサイトの形が変化します       不安を感じると真ん中にいる時間が減少します