第13回 One Health Relay Report(国際協力・教育部門 山岸 潤也 教授)


第13回目は山岸先生による「病原体について」のお話です。

 

 

 山岸 潤也 教授

 人獣共通感染症国際共同研究所

 国際協力・教育部門

 

 【研究テーマ】

 ・塩基配列解析に基づく新規診断法の開発

 

 

 

「全ての病原体を1つの方法で」

 

あたりまえに聞こえるかもしれませんが、新型コロナウイルスの診断には新型コロナウイルス専用の診断方法を、インフルエンザの診断にはインフルエンザ専用の別の診断方法を使う必要があります。ところが、世界には非常に多くの病原体が存在します。その一つ一つに診断方法を開発するのは困難ですし、新型コロナウイルスのように未知の病原体が広まった時には、ゼロから診断方法を開発しなければなりません。そこで私たちのグループでは、未知・既知を含む全ての病原体を診断できるユニバーサルな方法の開発を進めています。鍵となるのは、病原体のゲノムです。全ての病原体は、我々動物同様、各々の病原体特有のDNAかRNAをゲノムとして保有しています。そこで、患者や患畜の鼻水や血液からDNAかRNAを抽出して解析することが出来れば、病原体の特定、すなわち診断が可能になります。特に近年、ナノポア型シーケンサーと呼ばれる手のひらに乗るほど小型で安価なDNA・RNAの解析装置が利用できるようになりました。私たちのグループが開発する方法とナノポア型シーケンサーを組み合わせることで、空港でも、田舎の診療所でも、アマゾンの奥地でも、宇宙でも、どこでも、どの感染症についても診断ができる未来を目指しています。

 

      

病原体ゲノムを標的とした診断法のトレーニング   ナノポア型シーケンサーの一つFlongle

 

世界各国の研究者と協力して新しい感染症診断の実現を目指しています。