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第39回 One Health Relay Report(実験動物学教室 森松 正美 教授)
第39回目は森松先生による「獣医の役割について」のお話です。
森松 正美 教授
獣医学研究院
応用獣医科学分野 実験動物学教室
【研究テーマ】
・炎症反応における細胞内情報伝達
・遺伝子相同組換え反応の破綻と腫瘍性疾患
・疾患モデル動物の開発と解析
「ウシの獣医を目指していましたが今はネズミの獣医をやってます」
私は北海道十勝の酪農地帯の出身で、ウシの獣医になりたくて大学に入りました。ですが、卒業の頃に農業共済組合(現在のNOSAI)が組織改革するとのことで求人がストップしてしまい、大学に残って研究を続け、今はネズミ(マウス、ラット)の研究や、それに関連する動物実験の教育と施設管理に携わっております。
学部と大学院では、ウシの炎症マーカーの確立に取り組みましたが、その時に指導を受けた先生から基礎研究をやりなさいといわれ、炎症の仕組みや、そのマーカータンパク質で見つけた遺伝子重複・組換えに興味を持って研究を続け、今に至っています。Rad51という組換え酵素を遺伝子改変マウスで研究している米国のラボに留学し、この酵素が乳がん原因タンパク質と結合することを発見してがんに興味が広がり、イヌの乳腺腫瘍も研究することとなりました。また、生化学教室で一緒だった北村浩先生(現酪農学園大学)と共同で、炎症で強力に発現するタンパク質Nfkbizを発見し、これが変異すると皮膚炎が起こることを突き止めました。
ヒトも動物も同じような仕組みで病気になります。病気のモデル動物を調べてその成果をヒトの健康増進に役立てる、動物実験の分野に現在は身をおいています。そういう分野の動物で必要のない苦痛や病気の負担を避けるため、動物のケアや技術の普及を行うことも、獣医の重要な役割です。
正常なマウス(左)で見られない眼周囲の皮膚炎がNfibiz欠損マウス(右)で認められる
細胞に放射線を照射するとRad51がDNA損傷部位に集まる
(左は核を右はRad51を検出した蛍光顕微鏡像)
ネズミの吸入麻酔装置の説明動画を作成している様子