国内6例目のダニ媒介脳炎の患者を確認


 

国内6例目のダニ媒介脳炎の患者を確認 

 

 

 2024年6月24日、北海道札幌市において国内6例目となるダニ媒介脳炎*1患者が確認されました1, 2, 3, 4, 5, 6

 

*1 ダニ媒介脳炎の病原体は、ダニ媒介性脳炎ウイルスです。同ウイルスは、げっ歯類とマダニ*2の間で維持されています。ダニ媒介脳炎は、主に同ウイルスを保有するマダニにヒトが刺咬されることによっておこる感染症です。ヤギの生乳を飲むことにより感染することもあります。なお、通常、人から人に同ウイルスが直接うつることはありません。

 同ウイルスは、ヨーロッパ亜型、シベリア亜型及び極東亜型に分類され、日本(北海道)では極東亜型のウイルスが分布し、1993年以降、北海道において発生が確認されています。

 潜伏期間は7~14日程度、極東亜型ウイルス感染による主な症状は、発熱、筋肉痛、麻痺、意識障害、痙攣、髄膜炎、脳炎などです。致死率は20~40%、生存者の30~40%に神経学的後遺症がみられるといわれています。

 

*2 森林や草地など屋外に生息する比較的大型(成虫の体長3~8mm程度)のダニで、生息場所に近づいた動物や人に寄生し吸血します。ダニ媒介脳炎をはじめエゾウイルス熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ライム病、回帰熱などのダニ媒介感染症の原因となる病原体をもっていることがあり、咬まれると同感染症に感染することがあります。なお、北海道内では、エゾウイルス熱、ライム病、回帰熱、ダニ媒介脳炎の患者が確認されています。

 

1.本事例の概要

(1) 患者の年齢等:札幌市内在住、50歳代の男性

(2) 患者のダニ刺咬歴:有り

(3) 患者の症状:発熱、麻痺、意識障害、痙攣、髄膜炎、脳炎、筋力低下

(4) 経過:

・5月中旬;道央圏域で山菜採りを行い、ダニに脚部を咬まれる。

・5月23日;発熱、四肢のしびれなどの症状を発症。

・6月6日;ダニの刺咬歴・臨床症状などから医師がダニ媒介脳炎を疑い、医療機関が札幌市保健所に連絡。北海道立衛生研究所で検査を実施。

・6月24日;検査の結果、陽性と判明。医療機関が札幌市保健所に発生届を提出。

 

2.ダニ媒介脳炎の発生状況

(1) 国内4

 

(2) 海外

 世界では、ダニ媒介脳炎の患者は、毎年1万から1万5千発生しています。中央ヨーロッパ、東ヨーロッパの多くの国々およびロシア、中国で流行しています。

 

3.予防

 マダニに咬まれないようにすることが最も重要です。草の茂ったマダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴(サンダルのような肌を露出するようなものは避ける。)、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻くなど、肌の露出を少なくすることが大切です。虫よけ(忌避(きひ)剤)の併用も効果が期待されます。

(参考)マダニ対策、今できること(厚生労働省)7

 

4.マダニに咬まれた際の対応

 野外活動後は入浴し、マダニに咬まれていないか確認すること、マダニの咬着(咬みついたまま皮膚から離れない状態)が認められた場合は、無理に自分で引っ張ったりせずに、ただちに皮膚科などを受診し、マダニの頭部が残らないように除去してもらうことが重要です。

 また、マダニに咬まれた後、数週間程度は体調の変化に注意し、発熱等の症状が認められた場合は、内科などで診察を受けてください。

 

 

1.厚生労働省 ダニ媒介脳炎について:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000133077.html

2.厚生労働省 ダニ媒介感染症に係る注意喚起について(2024年6月26日):https://www.mhlw.go.jp/content/001268426.pdf

3.北海道 ダニ媒介感染症について:https://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kst/20210922dani.html

4.札幌市 ダニ媒介感染症:https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/f1kansen/f33madani.html

5.国立感染症研究所 ダニ媒介性脳炎とは:https://www.niid.go.jp/niid/ja/encycropedia/392-encyclopedia/434-tick-encephalitis-intro.html

6.北海道立衛生研究所 ダニ媒介脳炎について:https://www.iph.pref.hokkaido.jp/topics/tick-borne_encephalitis1/tick-borne_encephalitis1.html

7.厚生労働省 マダニ対策、今できること:https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/2287-ent/3964-madanitaisaku.html