歴史

One Health の概念は、1860 年代にドイツの病理学者Virchow の人獣共通感染症の考え方に端を発し、2004 年のマンハッタン原則(野生動物保全協会)で「人獣共通感染症の制圧と生態系の健全性維持には、多くのセクターの協働による領域横断的取り組み“One Health approach”が必要である」ことが提唱されたことにより明確化されました。その後One Health の概念は進化し、「人と動物の病気の共通性から、医学・獣医学の連携は双方の健康の向上に繋がる」とするZoobiquity(汎動物学)の観点から、医学系と獣医学系領域の一層の連携推進が求められています。

 

 

理念・定義

One Healthは、人、家畜、野生動物、植物、そしてより広い環境(生態系を含む)の健康が密接に関連し、相互に依存していることを認識し、人、動物、生態系の健康のバランスを持続的に保ち、最適化することを目的とした統合的で統一的なアプローチとして定義されます(The One Health High Level Expert Panel, an advisory panel to the One Health Quadripartite (FAO, WHO, WOAH, and UNEP, PLoS Pathogens, One Health High-Level Expert Panel (OHHLEP), 186)、e1010537,2022)

 

また米国疾病予防センター では、人、動物、植物、それらを共有する環境は繋がっていることを認識して、最適な健康を達成することを目標に、地域、国家、世界レベルで実施する領域横断的、学際的な協働的アプローチ として定義されています。

このように、健康・健全性を守るためには、医歯薬学、保健科学、獣医学、環境科学、社会科学など多くの学問領域、あるいは、様々な行政単位、産業界、教育研究機関等の領域横断的な協働(One Health アプローチ)が必要とされます。そして、ヒト、動物、環境の健康を一つのものとして捉えたOne Healthアプローチを通して、健全な生活環境を次世代に繋げていくことが重要な目標です。

 

 

 

 

 

 

社会への浸透

2023519~21日にかけてG7広島サミットが開催されました。

関連会合として、同年513~14日に長崎県長崎市にて、G7保険大臣会合(国際保健分野の諸問題についてG7の閣僚会合)が開催されました。

G7長崎保健大臣宣言においてもOne Healthの重要性に触れられており、特に、今後のパンデミックの予防・備え・対応、薬剤耐性菌問題、気候変動、生物多様性の損失、環境汚染について、One Healthアプローチの重要性が強調されています。

G7 HIROSHIMA 2023(外部リンク)