北海道大学大学院獣医学研究院
プログラムコーディネーター
堀内基広

 

プログラムコーディネーターからのメッセージ

 

 インフルエンザ、エボラ出血熱、結核、薬剤耐性菌感染症などの人獣共通感染症・新興再興感染症が次々に出現し、健康を脅かしています。口蹄疫、豚コレラなどの越境性動物感染症は、一度侵入すると、甚大な経済的被害をもたらします。環境中に放出される鉛などの有害金属、ダイオキシン等の汚染物質、放射性物質、残留性有機汚染物質などによる汚染は地球規模で進んでいます。感染症病原体と化学物質による健康・社会経済被害は、絶えず発生する問題です。現代に生きる我々は、健康被害を引き起こすハザード(感染症病原体と化学物質)に対峙し、持続可能かつ健全な生活環境・生態系を次世代に引き継ぐ責務があります。感染症以外でも、腫瘍、泌尿器あるいは神経系疾患など、人と動物の共通の病気が沢山あります。最近では「人と動物の生理機能の相違および病気の共通性の探求は双方の健康の向上に寄与する」という考えの下、広く医療・獣医療の連携を推進する汎動物学 “Zoobiquity”が提唱されており、その機運が高まっています。

 

 本プログラムが御旗に掲げる“One Health”の実現には、医学、獣医学、環境科学などの学問領域、および発生現場、医療、研究開発、教育およびリスク管理などに関わる機関が協働する“One Health approach”が必要です。本プログラムでは、感染症・化学物質・動物科学に関する教育研究リソースを活用し、先端的な研究を推進します。信頼できるカウンターパートを有するグローバルネットワークを活用した国際共同・調査研究、WHO、JICAなどの国際行政・協力機関との連携、企業との連携による開発研究など、One Healthに関連する多くの経験を大学院生に積ませることを通じて、疾病制御・予防の理念を明確にもち、バランス感覚に優れた国際性と俯瞰力を備え、One Healthに係る諸問題を解決できる専門家を育成します。