第9回 One Health Relay Report (生化学教室 岡松 優子准教授)

2020/06/08


 

第9回目は岡松先生による「熱を作る脂肪組織について」のお話です。

 

 岡松 優子 准教授

 獣医学研究院

 獣医学部門 基礎獣医科学分野

 

【研究テーマ】

 ・脂肪組織の機能・発達制御についての研究

 ・様々な動物における脂肪組織の役割についての研究

 ・褐色脂肪組織によるエネルギー代謝と肥満・生活習慣病対策への応用についての研究

 

 

【自己紹介】

学生時代に9年間シマリスと暮らしていました。温暖な室内で飼育しているのに毎年冬になると冬眠する姿をみて、不思議だな、面白いなと思ったことが現在の研究テーマを選ぶきっかけになりました。

 

 

「熱を作る脂肪組織について」

 

 厚生労働省の国民健康・栄養調査によると日本では成人男性の30%、成人女性の20%が肥満しているそうです。肥満は糖尿病や高脂血症などの生活習慣病を引き起こし、日本人の死因の上位を占める心筋梗塞や脳梗塞などの病気につながります。肥満は余剰なエネルギーが白色脂肪組織に中性脂肪として蓄積している状態なので、食事制限によりエネルギー摂取を減らすか運動によりエネルギー消費を増やすことが最も効果的な対策法ですが、実践するのはそう簡単ではありません。

 

 哺乳類には褐色脂肪組織というもう一種類の脂肪組織があります。冬眠動物が冬眠から覚醒する際に体温を上昇させるために熱を作る組織として発見されました。熱産生のために脂肪エネルギーが消費されるので、薬剤や食品成分により褐色脂肪組織を活性化すると肥満が軽減できることを、これまでの研究により示してきました。

 

 白色脂肪組織は生活習慣病を引き起こす悪者のようにも感じられてしまいますが、冬眠動物がエネルギーを蓄積して食物が乏しい季節を乗り切ったり、乾燥地帯に生きるラクダが背中のコブに蓄えた脂肪から得られる代謝水*により水不足に対応したり、寒冷地に生息するアザラシが厚い皮下脂肪により体温の損失を防いだりと、動物たちの生存に重要な役割を果たしています。また、白色脂肪組織は種々の刺激により褐色脂肪組織に転換することがわかってきました。そのメカニズムを明らかにして褐色脂肪組織を増やし、肥満対策や太りにくい体質づくりにつなげようと日々研究をしています。

 

*代謝水:栄養素が体内で代謝される時には必ず水が作られます。三大栄養素のうち、脂質が最も生じる代謝水が多く、100gの脂肪が代謝されると100ml以上の代謝水が生じます。

 

  

アザラシの赤ちゃんの脂肪量測定         マウスの白色脂肪組織の一部が褐色脂肪組織に転換している様子

                       (外側の白い細胞が白色脂肪細胞、中心部の赤い細胞が褐色脂肪細胞)

 

学生時代に同居していたシマリス


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