第4回 One Health Relay Report(感染症学教室 今内 覚准教授)

2020/03/02


第4回目は今内先生による「免疫療法〜免疫チェックポイント阻害剤について〜」のお話です。

 

今内 覚 准教授         

1)大学院獣医学研究院病原制御学分野感染症学教室

2)大学院獣医学研究院先端創薬分野

 

研究テーマ:動物難治性疾病に対する創薬研究

 

 

 

  

「免疫療法 〜免疫チェックポイント阻害剤について〜」

 有効なワクチンがない動物の難治性疾患は多数存在します。難治性疾患のほとんどが慢性の感染症や腫瘍などの病気であり、対処療法として抗生剤などが使われています。しかし、治療しても思うように回復しないことから動物は消耗し、長期的な生産性低下の原因となっています。また抗生剤の使用は、肉や乳製品への残留や薬剤耐性菌問題*1なども山積しています。よって抗生剤に依存しない新規制御法の開発が求められています。

 動物の難治性疾患に対して様々なワクチン開発を行いましたが、接種した動物で期待された効果が認められないことが繰り返されました。様々な臨床検体を解析した結果、免疫チェックポイント因子*2であるPD-1やPD-L1などが病態悪化をもたらす原因の一つであることが明らかになりました。そこで免疫チェックポイント阻害剤の開発を目指しました。牛の難治性疾病に対する免疫チェックポイント阻害剤を用いた臨床研究では牛白血病やマイコプラズマ症で病原体に対する免疫応答が再活性化され、感染牛体内の病原体量を減少させる効果が得られました。また、犬の腫瘍疾患に対する臨床研究では、悪性黒色腫*3と未分化肉腫に罹ったイヌの一部で、明らかな腫瘍の退縮効果が確認され、さらに悪性黒色腫では肺に転移した後の生存期間を延長する効果も得られました。 現在、実用化を目指した臨床研究を継続中です。

 

*1 薬剤耐性菌問題とは、抗生剤が有効だった細菌が抵抗性を獲得することで、抗生剤が効かない細菌が増加していること。

*2 免疫チェックポイント因子とは、正常な免疫を保つためにブレーキ役を担うタンパク質のこと。しかし、過剰に働くと免疫が抑制されてしまう。PD-1はT細胞に発現する免疫チェックポイント因子で、結合する相手はがん細胞などに発現するPD-L1。

*3 悪性黒色腫は、イヌの口の中に発生するがんの中で最も多く、非常に治りづらいがんの一つ。

 

<参考サイト>

・牛難治性疾病の制御に応用できる免疫チェックポイント阻害薬 (抗PD-L1抗体)の開発にはじめて成功

https://www.hokudai.ac.jp/news/170427_pr.pdf

・牛難治性疾病の制御に応用できる免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)を,抗PD-L1抗体薬に続き開発

https://www.hokudai.ac.jp/news/170607_pr.pdf

・イヌのがん治療に有効な免疫チェックポイント阻害薬 (抗 PD-L1 抗体)の開発にはじめて成功 ~北海道大学動物医療センターにおける臨床研究成果~

https://www.hokudai.ac.jp/news/20170825_jyu.pdf

・ウシの疾病に有効となる抗ウイルス効果の確認に成功 〜牛白血病などの新規制御法への応用に期待〜

https://www.hokudai.ac.jp/news/190807_pr2.pdf

・「2019年農業技術10大ニュース選出:牛白血病の新たな制御方法、抗ウイルス効果の確認に成功 -牛の難治性疾病に対する応用に期待-」

https://www.hokudai.ac.jp/news/2019/12/-201910.html

・北海道大学大学院獣医学研究院 感染症学教室ホームページ

https://lab-inf.vetmed.hokudai.ac.jp/

 

   

             感染症学教室の教室員

 

動物医療センターでの免疫チェックポイント阻害薬試験において奏功

(腫瘍退縮効果)が認められた患者さん(和泉先生、前川先生、出口先生、高木先生、今内先生)

 

 マダニ海外共同研究 (ブラジル・リオグレンデドスール連邦大学)


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