第18回 One Health Relay Report(遺伝子病制御研究所 村上 正晃 教授)

2021/03/30


第18回目は村上先生による「新規治療法の開発について」のお話です。

 

 村上 正晃 教授

 遺伝子病制御研究所

 分子神経免疫学

 

 【研究テーマ】

 ・精神・神経と免疫反応の関係の解析

 ・IL-6アンプによる創薬開発

 ・ゲートウェイ反射による組織特異的な病気の解析

 

 

「宇宙実験とムーンショット研究から実施する病気の新規治療法の開発」

 

私たちは炎症と病気の関係をIL-6*1とCD4+リンパ球*2から研究してきました。2008年に血管などの免疫系以外の細胞でのSTAT3とNFkB転写因子の同時活性化で局所炎症が誘導される分子機構「IL-6アンプ」を発見しました。その後のIL-6アンプの研究から、遺伝学的な実験から病気に関連することがわかっている遺伝子の中の多くのものがIL-6アンプの活性化に関与すること、各組織には炎症の引き金となるIL-6アンプが活性化しやすい細胞が存在すること、さらに、新型コロナウイルスのサイトカインストーム*3にIL-6アンプが関連する可能性があることがわかりました。また、2012年には、重力を起点とする神経細胞の活性化が、腰の部分の血管でIL-6アンプを活性化し、自分に反応するリンパ球の脊髄への入り口を形成する「重力ゲートウェイ反射」を発見しました。その後、痛み、電気、ストレス、光刺激など別の神経細胞を介してそれぞれ別の場所の血管のIL-6アンプを活性化してそれぞれの場所の病気が誘導されることを示してきました。重力ゲートウェイ反射は、2019年に世界で初めて病気のモデルマウスを国際宇宙センターに送る宇宙実験へとつながり、また、2021年からはこれらの研究をAMEDムーンショット研究として実施し、2040年までに100歳まで健康に生活する健康長寿社会を目指しています。

 

*1 IL-6 (インターロイキン6):サイトカインと呼ばれる可溶性の低分子タンパク質の1種。IL-6は、特に炎症で誘導され細胞表面のIL-6受容体に作用して、細胞内で転写因子STAT3を活性化する。

*2 CD4+リンパ球:Tリンパ球の1種でヘルパーT細胞とも呼ばれる。抗原特異的に活性化して大量のサイトカインを産生する。

*3 サイトカインストーム:ウイルス感染症、癌治療時の免疫療法などで体内に大量のサイトカインが産生されて引き起こされる致死性の状態。新型コロナウイルス感染症でも一定数の人がサイトカインストームを引き起こして死亡することがある。

 

 

  

 

 IL-6アンプによる炎症性疾患の誘導     IL-6アンプによるCOVID-19患者でのサイトカインストームの誘導

 

宇宙実験による重力ゲートウェイ反射の証明

 


 → 活動報告のページへ戻る


 → 過去の報告はこちら (北海道大学 博士課程教育リーディングプログラム「One Healthに貢献する獣医科学グローバルリーダー育成プログラム」)