第16回 One Health Relay Report(遺伝子病制御研究所 吉松 組子 准教授)

2021/02/08


第16回目は吉松先生による「ハンタウイルスについて」のお話です。

 

 吉松 組子 准教授

 遺伝子病制御研究所

 附属動物実験施設

 

 

 

 

 

 

「ハンタウイルスと人類 – ネズミがつなぐ三角関係」

 

 南米出血熱・クリミアコンゴ出血熱などの恐ろしげな感染症の原因ウイルスの多くがブニヤウイルス目に属します。日本でも重症熱性血小板減少症や腎症候性出血熱の報告があります。ブニヤウイルスは本来「虫」のウイルスであり、地球の歴史の中で虫とともに進化を続け多様化してきたものと考えられます。その中で、なぜか虫を捨ててネズミを宿主に選んだ、ハンタウイルスについてご紹介します。ハンタウイルスは1970年代終わりに腎症候性出血熱の原因として発見されました。セスジネズミが宿主であり、その排泄物や血液などの飛沫を人が吸い込むことによって感染します。その後、多様なハンタウイルスが多様なネズミから見つかってきました。ネズミとハンタウイルスは共に進化してきたとみられ、病気を起こすことなく共生する関係が完成しています。ネズミは、その種数において哺乳類の総種数の約半数を占め、その総重量・バイオマスにおいてクジラ類を超え、人類の傍らで生きる、異例の進化的成功をおさめた動物です。ハンタウイルスはネズミを必要とし、ネズミは人を必要とします。そして人はハンタウイルスに感染する機会を得てしまったのです。スリランカでは1990年代から特定の地域に原因不明の慢性腎臓病(CKDu)が急増しています。ミステリアスな死に至る病として報告されていましたが、私たちはハンタウイルス感染がこの病気の発症リスクとみられることを報告しました。今後、慢性疾患へどのようにハンタウイルス感染が関与するのか、人にのみ病気を起こすのはなぜかを明らかにしたいと考えています。 

 

 

げっ歯類捕獲調査へゆく途中、スリランカの道端に現れた野生の象

 

 

捕獲されたクマネズミ          屋外仮設ラボでのげっ歯類の検査


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