第12回One Health Relay Report(解剖学教室 市居 修 准教授)

2020/08/24


第12回目は市居先生による「寡黙な腎臓について」のお話です。

 

 市居 修 准教授

 獣医学研究院

 基礎獣医科学分野 解剖学教室

 

【研究テーマ】

 動物の腎泌尿器と免疫系

 動物の腎疾患とバイオマーカー

 

 

 

「寡黙な腎臓」

 

 

“かんじんかなめ”。肝心要または肝腎要と書き、とても重要なものを表すことばです。国語の歴史からみても、腎臓は心臓や肝臓と同じくらい大切にされてきました。

 

心臓の異常はその拍動にあらわれますが、腎臓と肝臓の病気はわかりにくく、ともに “物言わぬ臓器” と称されます。しかし最近、腎臓は大きな悲鳴をあげており、日本人の約8人に1人が “慢性腎臓病(CKD)” に苦しんでいます。動物では、特に高齢ネコのCKDが増えており、CKDはもはや “動物とヒトの共通疾患*1” と言えるでしょう。肝臓は強い再生力をみせますが、腎臓は治りにくく、腎臓病の対策には “予防と早めの診断” が肝腎です。

 

私たちの研究は、この物静かな腎臓の小さなサインを見逃さないために、“バイオマーカー” と呼ばれる診断ツールの開発を目指しています。腎臓は血液を濾過する “糸球体” と その濾液を再吸収する “尿細管間質” に大まかに分けられ、腎臓病ではいずれか、あるいは両方が壊れます。これらの “どちらが、どれほど、どのように壊れているのか” を知ることが、後の治療法決定に重要となります。

 

どのようなものがバイオマーカーになるのでしょうか?私たちは日々捨てられる “尿” に着目しており、尿に含まれる蛋白や核酸を網羅的に解析し、動物とヒト、双方に有用なマーカー候補を模索しています。なかでも、尿中のエクソソームと呼ばれるカプセルに内包されたマイクロRNA*2という核酸に着眼し、そのバイオマーカーとしての有用性と将来性を検証しています。

 

*1 私は “汎動物学的疾患” と呼んでいます。詳しくはニュースレターをご参照下さい。onehealth.vetmed.hokudai.ac.jp/content/files/Publication/News_Letter_vol.1.pdf

*2 22塩基程度の短鎖RNAで、その配列は動物種間で高度に保存されています。

 


図1:ウサギ腎臓の光学顕微鏡写真。アスタリスクは糸球体、そのまわりは尿細管で包囲されている。

 

図2:マウス糸球体を構成する細胞(足細胞)の走査型電子顕微鏡写真。左は健常、右は腎臓病時。これまでの研究から、腎臓病時に足細胞の形は変化し、マイクロRNAを含むエクソソームを放出することがわかった。

 

 

図3:尿細管傷害マーカーのイメージング。傷害を受けた尿細管が赤で着色されている。ここではIL-36αというバイオマーカー候補蛋白を蛍光顕微鏡で可視化している。


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